本願力にあひぬれば むなしくすぐるひとぞなき

人間の死亡率は100パーセントです。死はどれだけ逃げ回っても逃げ切れるものではありません。死から目を背けず、死をしっかりと見据えることで「生」は初めて輝きを増すのです。

白血病で余命3カ月と診断された11歳の少女が遺した日記を紹介します。両親は本当の病状を隠し、「病気が治ったら、きっと100歳まで生きるよ」と悲しい嘘をつきました。しかし願いは叶わず、少女は息を引き取ります。枕元から見つかった日記には、こう綴られていました。

お父さん、お母さん、いつも優しくしてくれてありがとう。私の病気はすぐ治ると言ってくれたけど、私はもうすぐ死んでしまうの。でも100歳まで生きる工夫をします。今日からは1日を1年と思って生きていきます。朝を春、昼を夏、夕方を秋、夜を冬だと思って生きれば、残り3カ月で90歳。今 の11歳を足すと100歳を超えるでしょ。

実は、少女は自らの本当の病状を知っていました。しかし、必死に優しい嘘をつく両親の胸中を察し、最期まで知らないふりを通したのです。一人で声を殺して泣いた夜もあったでしょう。しかし両親の愛情に応えようとする思いが死を超える力となり、遺された感謝の言葉は、深い悲しみの中にある両親を救う一筋の希望となったのです。

「本願力にあひぬれば むなしくすぐるひとぞなき」。どのような人生も空しく終わらせないと誓われた阿弥陀如来の願いと誓いが私へと届いていることを示すのが「本願力」です。彼女の11年の生涯は、百年生きた人生にも勝る尊いものでした。

長寿社会では「どれだけ長く生きたか」が話題になりますが、仏教は「どのように深く生きたか」を問います。寿命の長短に関わらず、人生を真摯に全うするのが、本願力を説く浄土真宗の教えです。少女の心から、その生き方を学びたいものです。

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2026年06月01日