大乗荘厳経論②

【『大乗荘厳経論』の大乗仏説論】

大乗の学匠たちが著述した「論」において「大乗は仏説である」という「大乗仏説論」がまとまって論じられるようになりました。


そのうち『大乗荘厳経論』は紀元4~5世紀ごろに書かれた「論」です。韻文の本文に散文の註釈を添えた形で伝わっています。
本文部分は無著菩薩、註釈は無著菩薩の実弟である世親(天親)菩薩が実質的な著者と考えられます。

本論書の大乗仏説論は「説一切有部」という部派の比丘たちから提起された8つの大乗批判に応える形式で始まります。8つの大乗批判を最小限に要約すれば次の2点になりましょう。

(1)『般若経』等の大乗経典は仏滅後に釈尊以外の者によって説かれたものだから仏説ではない

(2)十地、六波羅蜜、空などの大乗の教説は原始経典の伝統的教説は異なるから仏説ではない

(1)は大乗の教説者について、(2)は教説内容についての疑問です。

こうした批判に対して『大乗荘厳経論』は特に後者の疑問に応えてゆこうとします。

その中で重要な役割を果たすのが『涅槃経』という原始経典の経文です。同経には「何が仏説であり、何が非仏説なのか?」を説く「四大教法」という一節に「法性(法の本性)に反しないものは仏の言葉(仏語)である」という教説があります。

『大乗荘厳経論』はこの教説に基づいて「大乗はたとえ伝統的教説に反する面があっても、法性に反しないから仏語である」と述べられています

続いて『大乗荘厳経論』には広大にして甚深なる法性を説くこの大乗は

① 仏以外の者によっては説きえないから仏説である

② 仏のさとりをもたらすから仏説である

と示唆します。

これらは先の対論者からの「(1)大乗の教説者」「(2)教説内容」に関する批判にそれぞれ応えたものです。より重要なのは「(2)教説内容」に対する主張と考えられます。

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2025年06月17日