人間は実際の能力に関わらず、「これはこういうものである」という先入観や思い込み、ステレオタイプを持つと、その方向に自分を合わせてしまうようです。
「男性に比べて女性の数学的思考力は弱い」という話を聞きます。実際はどうなのでしょうか。そのことを調べた実験があります。
男女それぞれ約30人の被験者に対して、「男性に比べて女性は数学が苦手」というイメージを持たせたグループと、「男性と女性の数学的能力に差はない」というイメージを持たせたグループに分けて、数学テストを実施しました。
結果は、「女性は数学は苦手」という先入観を持たせたグループの方が成績が悪くなったといいます。
「男性も女性も変わらない」という思い込みのグループは成績低下は見られませんでした。
つまり、「女性は数学が苦手」という思い込みによって、女性は自分自身から無意識の内に数学な苦手な人間に寄ってしまう……そういう心の働きが人間にはあるようです。
他にも「地図が読めない女性」という言葉や概念が広まることで、実際にそういう女性が増えていくと考えられます。
しかし、女性が空間認識能力が劣るという言説は、その女性を取り巻く社会環境によっては当てはまりません。
例えば、長女が家族の資産を相続する女系社会では、女性の空間認知能力は男性に劣らないことが知られています。
「女性は地図が読めない」「女性は空間認知能力が弱い」「女性は数学力が弱い」といったイメージは、女性に対する社会圧力が原因で生じた誤解と差別ではないでしょうか。
男女差が生得的にはないにも関わらず、女性自身が社会に認められるために「社会が求める女性像」に自分を当てはめてしまっているように思います。
ほとんど無意識の内に「社会からの要請」という圧力を受け入れて、先入観にすり寄っていくことで生じる「作られた男女差」が社会に蔓延しているのかも知れません。〈参考『驚きの心理学』〉
合掌