ナモとナム③

玄智は「南無」の読み方を「ナモ」と確定しました。


真宗十派の中で浄土真宗本願寺派だけ「ナモ」と発音するのは「本願寺派には玄智が存在したから」といっても過言ではありません。

しかしそもそも親鸞聖人が用いていたのは「南無」ではなく「南无」です。果たして玄智は本当に聖人の読み方を踏襲しているといえるのでしょうか。

ここで改めて考えたいのが「无」と「無」の関係です。

実は「无」と「無」は同じ意味を持ち、同じ使い方をする字です。『大漢和辞典』の「无」の項には「無に同じ。仏典に南无と書く」とあります。また『異体字辞典』の「無」の項には「古 同 无」と出ています。「无」は「無」の古字であり、「無」と同じ意味を持つ字なのです。

要するに「无」の代わりに「無」、反対に「無」の代わりに「无」を用いることができるといえるでしょう。

例えば蓮如上人の六字名号を見ると、楷書で書かれたものは「南无阿弥陀仏」と「无」が使われ、草書で書かれたものは「南無阿弥陀仏」と「無」が使われています。これは両者が区別されていないことの一例です。


以上、親鸞聖人から歴代宗主、そして江戸時代の玄智の「南無」の読み方をうかがってきました。

このような理由で浄土真宗本願寺派においては、親鸞聖人の読み方にのっとって「南無」を「ナモ」と読んでいるのです。

【引用・参考文献】
・『季刊せいてん』本願寺出版社
・篠島善映「「南无」の読み仮名についての一考察―本派本願寺に伝承されてきた読み仮名を中心に―」
『親鸞教学論叢』六五七~六五八頁

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2025年03月10日