弱点

東京教区布教団の総会が行われました。


研修会では京都・西本願寺より浄土真宗本願寺派の職員の方(波佐谷真悟さん)が「アンケート結果からこれからの法座を考える」といった内容のお話をされていました。


「従来の一対多数&一方通行ではない法座の形を」「受け手目線を大切に」ということを中心にお話がありましたが……実は今から63年前に宗派で同様の指摘があったことが記録されています。

昭和37年(1962年)、浄土真宗本願寺派は急激にご門徒が浄土真宗を離れていくことを危惧し、45日間の研修を行いました。
僧侶だけでなく、大学の教授、専門家が集まって、今何が問題なのか、それについて宗門はどう歩むべきかを話し合ったのです。
その研修に参加されていた高木宏夫[たかぎ ひろお。2005(平成17)年8月27日死去(84歳)。東洋大学名誉教授、宗教社会学者、大阪市出身]さんという方が、今の宗門の問題を15項目提言されました。

どれも非常に厳しい言葉であり、しかも47年たった現在(平成21年)、果たしてこれらの言葉にどれほど応えてきたのかと考え込んでしまいます。
以下にその15項目を挙げます。

①僧侶の方で熱心な燃えるような信仰の人に出おうたことがない。

②なんとかせねばならんと幼稚園などいろいろやっておられるが、それが信仰中心になっていない。

③大衆を教えてやるという姿勢ばかりで、信仰中心に、一般と共にという態度がないと。

④真宗の坊さんには、知識のあることが信仰のあるように錯覚している。知識だけで大衆との触れ合いがなく、インテリすぎて、一般から浮き上がっておる。

⑤布教が老人層には向けられているが、なぜもっと壮年層にはたらきかけないのであろうか。

⑥浄土真宗は、現代の人類、現代の文明に、何を果たし、何を答えていくかという宗教運動となっていない。

⑦ひとつ、大衆との接点が、儀礼だけでつながっている。大衆活動家を育てようともせぬが、また育つ余地もない今の真宗では、ただ今ある寺院を育てるのが精一杯じゃないか。

⑧墓地と行事にのみ教団をささえる根源を有しているようだが、これでいいかと。

⑨伝道をただ真宗の教義を平易に説くことと思いあやまっていないか。教義を平易に説くだけでは伝道とならん。それは講義だ。伝道は、人間ひとりひとりの苦悩に触れていかねばならない。

⑩現代人は、真宗の教義がわからんと言って悩んでおるようなひまな人はいない。貧、病、争、事業の失敗等を縁として人生の見通しと安らぎを求めている。

⑪宗教は生きていく方向と主体の確立を与えねばならない。価値体系が、近代的にはっきりと打ち立てられていない真宗では、大衆の価値転換が行われない。どれだけその人が法を聞いて価値転換されたかというようなことが注意されていないではないか。

⑫真宗の教理も順を追うて段階的に教えられるべきものであろう。そのへんの研究が足りない。

⑬新しく寺を立てようとする人たちを大きく育てる面が欠けていないか。むしろ、たたき落とそうとするように見えるがどうか。

⑭人間が実力主義に人材が使われていない。宗門で、ひとつ、機関誌、つまり『本願寺新報』と『大乗』ですね。機関誌がもっと大衆向きになり、信者側にたって、この運動の武器とならねばならんと思うがどうか。

⑮一方通行の布教だけで、両方通行、多方通行の「話し合い 法座活動」が行われていない。人間は人と人との触れあいの中で育てられ成長する。ことに、現代人にとって大切な一対一の布教が行われていない。……そんなことを思うがどうですか。
(引用 山口県 岩国市 専徳寺ホームページ「真宗の泣きどころ」より)

現代の僧侶が聞いても非常に耳が痛い内容です。

しかし63年を経過した現在でも宗派の職員が未だに同じようなことを話しているということは、宗門としては60年以上が経っても何も変化や改善がされていないということの裏返しかもしれません……悲しいことです。


宗派も現場ももっと頑張らなければいけません。

前の投稿

次の投稿

ブログ一覧

2025年05月27日