執筆を担当する『築地本願寺新報』の特集で「オススメの本を紹介して欲しい」と依頼がありました。
いろいろと思案していたところ「若手編集委員の方からは【漫画】を紹介して欲しい」とリクエストがありました。
漫画もそこそこ読む方ではありますが、「仏教的に勧められそうなものといえばやっぱりあれだよな……」と思っていたら、「『ブッタとシッタカブッタ』や手塚治虫の『ブッダ』は他の方が執筆するので、違う漫画からお願いします」と先手を打たれました。
しかも、「築地本願寺の境内にある書店に置くかもしれないので、電子書籍のみ・絶版の本はダメです」と縛りが設けられます。
いろいろと悩みつつ、今回は『AIの遺電子』と『ここは今から倫理です。』をご紹介させていただきました。
普通に読んでもとても面白く、特に「人間の不完全さ」が描かれているのが宗教者として、というか個人的に好きな作品です。
『AIの遺電子』は、人間とAIを搭載したヒューマノイドやロボットとの日常が描かれた作品です。
「完全さ」を求めて作られたはずのヒューマノイドたちは、「お腹が減るようになりたい」「記憶を失いたい」など、人間の持つ「不完全さ」を欲します。
不完全な存在である人間が作った世界は、不完全な存在にとって都合のいいようにできているのでしょう。
もちろん、仏教は人間の「不完全さ」を無条件に肯定するようなヒューマニズムとは違います。
しかし、自分の「不完全さ」を見つめることは大切にしています。
『ここは今から倫理です。』は、倫理を担当する先生と生徒たちが、授業内容や対話を通じで「よりよく生きる」ことについて考えながらストーリーが展開します。
確かに答えは見つからなくても、考えることで一時的に救われることってあるんですよね。しかし、それあくまでも「一時的」でしかありません。
この漫画は、いわゆる学園モノにあるような「先生が(倫理で)なんでも解決して一件落着」といった話ではなく、先生も生徒も葛藤しながら、目の前の相手に対する選択を間違えたり、見捨てたりします。
「人間が人間を救うことは不可能だな」と改めて感じますが、そこが描かれているからこそ魅力を感じる作品です。
本当は「救い」まであると浄土真宗のご法義にピッタリ適うのですが、「これこそが浄土真宗の救いだ」と言えるような漫画ってあるのでしょうか。
ちなみに「何か仏教的に味わえるオススメの漫画はありますか?」と先輩僧侶たちに相談してみたところ、『バガボンド』や『ダイの大冒険』を挙げていただきました。
合掌