『阿弥陀経』を読む18

★正宗分ー依正段「宝樹囲繞」②

また舎利弗、極楽国土(ごくらくこくど)には七重(しちじゅう)の欄楯(らんじゅん)・七重の羅網(らもう)・七重の行樹(ごうじゅ)あり。みなこれ四宝(しほう)周匝(しゅうそう)し囲繞(いにょう)せり。このゆゑにかの国を名づけて極楽といふ。
また舎利弗よ、その極楽世界には七重にかこむ玉垣と、七重におおう宝の網飾りと、七重につらなる並木があります。そしてそれらはみな金・銀・瑠璃・水晶の四つの宝でできていて、国中のいたるところにめぐりわたっています。それでその国を極楽と名付けるのです。

先生|前回は極楽に七重の欄楯・七重の羅網・七重の行樹があることを確認したんだけど……。

阿弥|当時のインドの人たちが理想とした価値観と言われても、現代の日本人の私は「ふーん」くらいにしか思いませんでした。


先生|もうひとつ大切なのが、それらが金・銀・瑠璃・水晶(玻璃)の四宝で作られていて、浄土の楼閣や宮殿を取り囲んでいることだよ。


阿弥|それは凄いですね! リッチでセレブな世界!

先生|実はこのことにいろいろな意味が込められているんだ。

阿弥|金銀財宝でできた玉垣や並木がですか?

先生|「七重の欄楯」は、目線でいうとどのくらいの高さにあると思う?


阿弥|目線の高さと同じくらいか、やや下くらいでしょうか。

先生|空を覆う「七重の羅網」はどのくらいかな?


阿弥|上空ですから、ずっと上です。

先生|「七重の行樹」は?


阿弥|ヤシの木ですよね? 「欄楯」と「羅網」の間くらいですかね……。

先生|つまり、「欄楯」「羅網」「行樹」の三つで「目に見えるすべての範囲」を表わしているんだ。


阿弥|あ~、なるほど。

先生|見えるものすべてが【みなこれ四宝】、すべてが宝である世界が浄土なんだよ。

阿弥|それは凄いですね~。でもそれがなんですか?

先生|「すべてを宝として受け止めていける世界」が仏さまの世界ということは、人間の世界はどうだろう?


阿弥|……すべてを宝として受け止められない世界?

先生|人間はどこまでいっても自分の都合でしかものを見ることができないから、ものの本当の価値がわからないんじゃないだろうか。
   役に立つか / 役に立たないか、自分にとって都合がいいのか / 悪いのか──そういう見方しかできないよね。

阿弥|そうでしょうか? 「いのちの価値は平等」「いのちを大切にしよう」って学校で習いましたよ。

先生|しかし、実際はどうかな。人間と虫を同じように扱える?


阿弥|それはちょっと……。

先生|食卓に高いお肉が出てきたら嬉しいけど、安いお肉だとそうでもない……値段にいのちの価値を見てしまうこともあるよね。

阿弥|昔、お母さんがお父さんからのプレゼントの値段を調べて喧嘩になったって言ってました。

先生|人間は、ものの本当の価値が分からないから、値段で判断しようとするんだ。

阿弥|「いのちの価値は平等」って言うのは簡単でも、実際にはそう見ることができないのが私たちの実態なんですね……。

先生|対して「すべてを宝として受け止めていける世界」が仏さまの世界なんだよ。


阿弥|仏さまの世界の有り様が、私たちの世界や人間の有り様を教えてくれているんですね。

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2018年12月30日