『阿弥陀経』を読む4

★「経」について


阿弥|内容に入る前に質問なんですが、お釈迦さまの説いた言葉を集めたものを「お経」と呼ぶのには何か意味があるんですか?

先生|いい質問だね。「経」という漢字には「たていと」という意味があってね。

阿弥|「縦の糸」ですか?


先生|「より糸」の象形と「はた織りの縦糸」の象形から「たていと」「たて」を意味する「経」という漢字が成り立っているんだ。

阿弥|そういえば地理の授業で「経度」が縦の座標で、「緯度」が横の座標と習いました。
   でもどうしてお釈迦さまの言葉を「たていと」と呼ぶんですか?

先生|布を織るときには「経糸(たていと)」と「緯糸(よこいと)」はどちらをベースにすると思う?

阿弥|うーん……「経糸」ですか?


先生|その通り。織物は、長さを揃えた経糸をきれいに並べてピンと張り、そこに緯糸を一段づつ入れて織るんだよ。
   これは世界中どの国でも共通した織り方をするから面白いね。

阿弥|「お経」と織物の「経糸」にはどんな繋がりがあるんですか?

先生| 中国の善導大師(ぜんどうだいし)という高僧は

経糸はよく緯糸をたもって織物と成り、はたらくことができます。お経は説かれている言葉や真理によって、すべてのものを取りこぼすことなく、さとりにいたらせるはたらきがあります。
[「経(きょう)」といふは経(たて)なり。経よく緯(ぬき)を持(たも)ちて疋丈(ひつじょう)を成(じょう)ずることを得て、その丈用(じょうゆう)あり。経よく法を持ちて理事相応(りじそうおう)し、定散機に随(したが)ひて義(ぎ)零落(れいらく)せず。]

と教えてくださったよ。
   経糸がしっかりしていることで、緯糸がバラバラにならないように、私たちの人生もお経の言葉に真っ直ぐと貫かれることで安心して生きていけるということだね。


阿弥|「お経」は「経糸」であって、私たちの人生を真っ直ぐと縦に貫く真理を表わしているということですか。
   なんだか洒落が効いた話ですね。ちなみに「緯糸」は何を表わしているんですか?

先生|善導大師は緯糸について特に何もおっしゃってないけど、緯糸は経糸の間を水平方向に往復して縫うように走っているのだから、まさしく喜んだり悲しんだりと右往左往する私たちの人生のようなものじゃないかな。

阿弥|「緯糸」は私たちの人生……深い話ですね。

先生|常に変化を続ける私たちの人生において、「その根底には変わることがなく、真っ直ぐと支えてくれる真理がある」と聞いていくのが仏教なんだよ。

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2018年09月23日