監獄実験2


「スタンフォード監獄実験」について改めて調べるために主催者であるジンバルドー教授が実験の詳細を書いた『ルシファー・エフェクト ふつうの人が悪魔に変わるとき』を読みました。


800ページを超える大ボリューム。値段も4000円オーバー……読み終えるのに丸1日を費やしました。


実験中に監獄の中で働いていた恐ろしい力を「状況の力」といいます。次に挙げる3つの要素があるこの力の下では、人は残忍な行動に走りやすくなります。

①権威への服従
権威や名目があると良心や道徳を捨てやすい。

②非個人化
与えられた役割によって自分を失うこと。特に制服は非個人化を促す。

③非人間化
相手の価値を認めず蔑んでしまうような状況。


ジンバルドー教授は、一部の腐ったリンゴによって周りのリンゴや樽全体が腐っていくとは考えません。腐った樽=「状況の力」と腐った樽の作り手=「システムの圧力」によって、どんなリンゴだって腐ってしまうのです。日本人であれば「空気を読む」といったときの「空気」がこれらにあたるのではないでしょうか。
つまり、どんな人であってもシステムと状況次第で悪魔になるという結論です。

精神科医の岡田尊司氏は「支配欲こそが人間の根源的衝動である」という説を紹介した上で、次のように述べられています。

別の見方をすれば、それは社会的役割という以前に、支配と被支配の争いだということもできるだろう。
看守役は、支配するという快楽に次第にのめり込んでいった。
一方、囚人役は、社会的役割に支配され、自分から囚人らしく振る舞おうとしたというよりも、看守役からそうすることを要求され、服従を強いられるうちに、囚人らしい振る舞い方に陥っていったと理解することもできるだろう。
最後まで看守役の方が実験の中止に抵抗したことも、看守役にとって、それが経済的のみならず、心理的報酬を伴うものであったことを推測させる。

スタンフォード監獄実験は、人間には支配しようとする強い衝動があり、それが密室的な状況では、暴走しやすいことを示すものである。家庭内暴力や虐待、イジメにおいては、まさにこの状況が現出していると言える。
支配する側は、あたかもそれが正当な「務め」のように思い込み、相手に服従を求め、刃向かえば暴力をふるう。
それが長期期間にわたって続いてしまいやすいのは、暴力によって支配する側が、支配という快感を得るからであり、表沙汰にならない限り、そうした行為をすることによって不利益や苦痛といった罰則が生じたないからである。

権力の座に就いたものが、それを手放したがらないのも、そこには麻薬的な報酬が存在するからだと考えれば、納得がいく。

合掌

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2017年12月24日