□釋○○
法名の「釋」の下が二文字なのは何故なのでしょうか。
『西遊記』に登場する「孫悟空」は、「孫」が姓で「悟空」が名前です。
中国では「姓一文字」「名前二文字」が伝統的に多かったようです。二文字の法名は、この習慣に由来しています。
だとすれば二文字であることに、さほど意味がないようにも思われます。
しかし、三文字以上が認められた場合、世俗の価値観が入り込み、長い法名が良いなどとされることでしょう。
「釋○○」という形を守っていくことにも、釈尊の平等の教えを継承していくという重要な意味があるのです。
□在家者と法名
法名は、もともと出家受戒した者に与えられる名でした。つまり法名は僧侶だけが持つ名前だったのです。
ところが、大乗仏教は出家していない者の救済・悟りを積極的に説く点に大きな特徴があります。
その結果、大乗仏教ではいろいろな点で僧侶と在家者の境界線が不明確になります。
とりわけ、日本仏教ではこの傾向が強く、従来、僧侶だけのものであった法名が、在家者に対しても与えられるようになります。
浄土真宗おいても、顕如上人(1543-1592)が門信徒に法名を授与した記録が残っています。
その後、江戸時代を通して僧侶以外も法名を持つことが一般化していったようです。
浄土真宗の立場からみると、そもそも阿弥陀如来はすべての者を等しく救おうとされたのであり、救いに僧俗の違いはありません。
この浄土真宗の教えを依りどころとして生きることを誓う名告(なの)りが法名ですから、原理的には僧侶以外が法名を持つことには何ら問題がありません。
むしろ、多くの人びとが法名を持つようになり、法名の価値が広く活かされるようになったと評価すべきでしょう。
□法名と戒名
浄土真宗では「法名」という言葉が使用されますが、他宗では一般に「戒名」という表現が用いられます。
古くは、仏法への帰依を意味する「法名」という言葉だけで、「戒名」という表現はありませんでした。
戒名は中国の古い文献・仏典には使用されないので、比較的新しい表現であるようです。
他宗では、受戒の意味を鮮明にした「戒名」を用い、浄土真宗ではもともとの名称である「法名」を現在も使用しています。〈本願寺出版社『季刊せいてん No.77』より〉
合掌