仏教の伝統に則って、浄土真宗でも尊前にお花をお供えします。
花に限らず、相手に物を贈るときには贈り物の「正面」を相手側に向けて渡すのが通例です。
ところが、尊前や墓前にお供えする花は「正面」を相手(仏さま)側ではなく、渡す側である私たちに向けます。
お供え物は、お供えすると同時に、仏前に座る私たちが「お下がり」をいただくという点が重要です。
お花をお供えするときは「お花のすがた」をお下がりとしていただくため、お花の正面を私たちの方へと向けます。
では「お花のすがた」は、私たちにどのような意味をもたらすのでしょうか。
私がよく聞くのは、次の3点を表わしているという話です。
①仏さまのこころ(慈悲)
②浄土のすがた(荘厳)
③人間のありさま(無常)
これらはあくまで先人方の「味わい」であるため、経典に「仏前に花を供える意味」が説かれているわけではありません。
例えば、浄土真宗本願寺派の安心と行事について問答形式で100箇条を記述した『百通切紙(ひゃくつうきりがみ|浄土顕要鈔)』には、仏華に関する文章があります。
仏華を通じて仏法を味わう習慣もまた、数百年の歴史があるようです。
合掌