世の中のすべてのことが、私たちの心や気持ちのとおりに進むわけではありません。
生きていれば、自分に好ましくないことはたくさん起こります。
そのときに当然、私たちの心は波立ちます。
自分の思いどおりにならないことを仏教では「苦」と言います。
「苦」に直面したときに、私たちは平静ではいられません。
いろいろな思いや考えが次々に湧き起こり、冷静ではいられなくなる……この状態を引き起こす精神作用を「煩悩」と言います。
例えば、「老いる」「病気になる」「死ぬ」ということを避けることはできません。
そのことを、「プラス」や「マイナス」としてとらえるのではなく、ただありのままに受け容れていくのが仏道です。
しかし、これれは非常に難しいです。なかなかできることではありません。
「いつまでも若々しく健康で長生きしたい」と、真実とは反対の自己中心的なとらわれの心でこの世界を見るから苦しみが生じます。
お釈迦さまは「如実知見」──つまり「世界をありのままに見て知りなさい」と教えてくださいました。
世界をありのままに見ることを、「さとる」といいます。常人には成し遂げることができない、大変難しいことです。
しかし、そのことを知ることは、仏道を歩む第一歩となるのではないでしょうか。