唐獅子牡丹

毎月、16日は親鸞聖人の月命日です。


築地本願寺では午前9時30分から御命日法要がつとまります。


ご講師は広島県福山市の苅谷光影先生です。


本堂の欄間(らんま)について、次のようなお話がありました。

お寺の本堂に彫刻されている欄間には、様々な種類があります。

よく彫刻されているもののひとつが「花」です。

お寺といえば「」をイメージする人も多いでしょうが、西本願寺や築地本願寺をはじめとした浄土真宗寺院の本堂の欄間には、古くから「牡丹(ぼたん)が彫られてることが多いです。

実はここに大切な意味が込められています。
京都府京都市左京区に臨済宗大本山の南禅寺というお寺があります。

周辺は豆腐が有名なこともあって、観光者は豆腐料理を食べて、南禅寺にお参りをし、その後は近くの平安神宮や京都動物園などの名所へ……というのが定番コースのようです。

南禅寺さんには、古い欄間がふたつ残されているといいます。江戸時代中期に彫刻職人・左甚五郎(ひだりじんごろう)の作です。
ひとつは「竹に虎」、もうひとつは「牡丹に唐獅子」が彫刻されています。
「竹に虎」とは、「竹藪の中に虎の居場所がある」を意味しています。

虎は非常に獰猛な動物ではありますが、大きな身体を持って群れをなす「象」にだけは勝てないそうです。

虎は象に襲われたときに竹藪へ逃げ込みます。

大きな身体で立派な牙を持った象は、竹藪に入ってくることはありません。

このことから、「竹に虎」は「安心する居場所」を示しています。
「牡丹に唐獅子」とは、「牡丹の下に獅子の居場所がある」を意味しています。

獅子というと少し分かりにくいですが、元々のルーツは「ライオン」であると考えられているそうです。

百獣の王であるライオンに敵はいません。しかし、そのライオンが恐れているものがひとつだけあります。

「獅子身中の虫、獅子を食らう」

という言葉があります。
現代でも「内部にいながら組織に害をなす者や、恩をあだで返す者」をさします。

外に敵はいない百獣の王も、自身の内から身体を蝕む虫には適いません。

「いつ、自分の身体が食い破られるのか……」と恐怖を抱えるライオンは、どこで身体を休めるかというと──
「牡丹の下」です。

獅子身中の虫の弱点は、現在も根っこが漢方として扱われる牡丹の夜露といわれます。

唯一の天敵を鎮めることができる牡丹の下こそ、ライオンにとって「本当に安心する居場所」なのです。
お寺の欄間に牡丹の花が彫られているということは、「あなたの人生にとって、安心の居場所・本当の心の依りどころを聞く場所がお寺の本堂ですよ」という先人方からのお示しです。

合掌

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2019年05月16日