人生は苦なり

お釈迦さまが説かれた仏教は「思いどおりにならない生活の中で、日々の苦しみからどうしたら解放されるのか」という問いがスタートにある教えです。

仏教の基本的な考え方として、お釈迦さまは人生を「苦しみ」であると表現されています。
代表的な苦しみは「四苦」あるいは「八苦」です。

四苦は「生」「老」「病」「死」、八苦はさらに「怨憎会苦」「愛別離苦」などの四つを加えたものです。「会いたくない人に会わなければいけない苦しみ」や「好きな人と別れなければいけない悲しみ」なども「苦しみ」とされています。

そういう好ましくない事態にあっても平静でいられるような心をつくっていく、つまり「修行」を通して煩悩を断ち切るという仏道があります。

しかし、親鸞聖人は「人間であるかぎり煩悩をなくすことはできない」と説かれました。

親鸞聖人の教えを門弟が伝えた『歎異抄』という本に「火宅無常の世界は、よろづのこと、みなもつてそらごとたはごと、まことあることなきに、ただ念仏のみぞまことにておはします」という文章があります。

この世界を「まことあることなきに」という表現した部分は、お釈迦さまの説いた「諸行無常」「諸法無我」という真理に該当します。

万物は常に変化しています。変わらない実体を持ってはいません。にも関わらず「変わらない何か実体のようなものがある」と考えてしまう私たちの姿が「そらごとたはごと、まことあることなき」という姿だと言うのです。

世の中には「魂」のように私たちが思うような固定した実体はありません。常に世界は私の意思を超えたところで変化し続けています。
苦しみとは、お釈迦さまが明らかにされているように「自分自身の思いどおりにならない」という真理を再び思い起こすのではないでしょうか。

「『思い通りにならないこと』にとらわならい」。私たちにはとうてい到達しがたい境地です。

しかし、煩悩がなくなったさとりの世界とは、あらゆる苦しみから離れた安らかなる世界であることを知るのは、仏法を聞く上では大切なことです。

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2021年12月01日