受験競争や職場内での競争、さらには会社同士の競争など、私たちは小さいころから「競争社会」の中で生きており、心の休まる暇がありません。
しかも、勉強や仕事、スポーツばかりではなく、日常の生活においても、無意識のうちに競争意識を働かせて暮らしています。
たとえば「もっときれいに」「もっと健康に」「もっとスマートに」「もっとおいしく」など、日々シャワーのごとく浴びせられる広告や宣伝によって、私たちは知らず知らずのうちに他人への競争心をたえず煽られつづけて生きているのではないでしょうか。
これでは、なおのこと、心が休まる間がありません。
学校でも、職場でも、日常生活でも、競争に身を削り、心を削られているとしたら、宗教やヒーリングなど何かで精神的な安らぎを得たいとする欲求が高まるのは当然でしょう。
本来なら、長時間心身を休める時間を持つのがよいのでしょうが、時間に追われて生活している現代人にとっては難しいことかもしれません。
そこで、なんとか機会を見つけ、せめて五分や十分でも競争に追われる生活を一度は断ち切る勇気を持ちたいものです。
いったん世の中の動きと少し離れて、心を休めてみる。
できれば緑の多い公園や野山など自然を感じられる風景を目にすると、なお心が休まると思います。
環境を変えられなくても、できることはあります。私はどこにいるときでも、手を合わせ静かに「南無阿弥陀仏」とお念仏を称える時間を大切にしています。
動き回りたがる手を止めて合掌し、繰り返し「どのようなあなたであっても決して見捨てません」と喚んでくださる仏さまの名を呼ぶことで、せわしない時間の流れから少しだけ身をずらすことができます。