SF作家・星新一さんのショートショート集『ようこそ地球さん』に「探検隊」という物語が収録されています。
ある日、巨大な宇宙船に乗って探検隊がやってきました。宇宙船から降りてきたのは大男たちと大きな動物(怪獣)です。やがて仕事を終えた探検隊は空の彼方へ去って行きました。
宇宙船が去った後、村に残ったのは二頭の怪獣。地下深く打ち込まれた杭に繋がれていたのですが、鎖を噛み切った怪獣たちは村人たちを襲い始める……という物語です。怪獣の名前はタローとジローといいます。
本作は日本の第一次南極観測隊が荒天に見舞われ、同行の樺太犬をやむなく南極に残した出来事をモチーフとしています。
南極に残された犬の命は絶望視されていましたが、第三次南極観測隊によって無事に発見され、さらに観測隊隊員のことを覚えていたという感動実話です。映画化もされました。
元々の話は人間と犬の視点で語られていますが、星新一さんの執筆された本作は南極のペンギンの立場で書かれています。
あとがきには「ペンギンの身にもなってみろと思って書いたのが、この『探検隊』である」とあります。犬に襲われたペンギン側から見ると残酷物語であるといいます。
ある番組にロックバンド「ザ・ブルーハーツ」「ザ・クロマニヨンズ」などのボーカルとして知られるミュージシャンの甲本ヒロトさんが出演されていました。
「いじめ」が話題となったとき、次のようにコメントをしていました。
虫のなかには「不快害虫」ってよばれる虫がいるんだけど、彼ら自身は何も悪いことをしていない。でも「なんか嫌い」「なんか気持ち悪い」とか言われているの。そういう気持ちがいじめや差別に繋がったりするのかもしれないね。
自己中心のものの見方が苦しみを作ります。自分中心の見方でありながら、他人だけでなく自分自身も苦しめるのです。ここが仏教の出発点でした。
自分の都合で「いい人」「いい天気」と思ってないかと問いかけるのが仏さまの教えです。
浄土真宗の宗祖である親鸞聖人は「自分中心という欲望から離れることができない愚かな私」とさらに突き詰めています。
いつのまにか、身勝手な考え、いじめや差別を生む自己中心な見方をしているのが私たちです。
このとらわれから離れられない私に「大丈夫ですか?」と問い続けるのが仏さまの言葉でありました。
〈参考『心に響くことば』〉