苦しみの原因は 自分の中にある

世間にはいろいろな宗教があります。その出発点はなんでしょうか。

私たちの世界や生き物が「神によって造られた」ということから出発する宗教があります。この宗教では、その神を信じ、その神の定めた掟に従うことがもっとも大事なことになります。

仏教の出発点は、お釈迦さまの疑問にはじまります、お釈迦さまが王子であられたころ「私たちの世界には、なぜ病や老いや死という苦しみがあるのだろうか。どうにかしてこの苦しみをなくす方法はないだろうか」という疑問を抱かれました。

その後、出家者のやすらかな表情をご覧になって「必ずやこれらの苦しみを解決する方法があるはずだ」と、お妃も子どもも王子の位も捨て、その苦しみを解決する方法を求めて旅立たれたといいます。

仏教の出発点は苦しみの解決です。この苦しみとは、普遍的な苦しみをさします。
仏教では苦しみを「生死」という言葉で表現します。生まれることも死ぬことも、自分の意志ではどうにもならないことです。

『無量寿経』というお経には「田や家を持っていないと『なんとか手に入れたい』と悩み苦しむ。反対に田や家を持っていると『いつかなくなるのではないか』もしくは『もっといま以上に田や家を手に入れたい』と悩み苦しむ」と説かれています。

これらの苦しみの原因の根源にあるものはなんでしょうか。それは「自分の思い通りにならない」という不満です。
自分の思いというものが、どのように理屈をはずれたものであっても、自分の思い通りになって当たり前だという思い上がりが人間にはあります。

神社の境内に「〇〇大学に入れますように」「試合で勝てますように」「お金が儲かりますように」といった参拝者の願い事が掲げられていることがあります。
これらの願いは実際のところ「自分ひとりがよければいい」と自分勝手な思いから出ているのではないでしょうか。

「自分の思い通りにならない」という苦しみは「自分の思い通りになる」ということによって解決するのではありません。
「自分の思い通りになって当たり前だ」という「自分中心の考え方」が破られることによって解決されるのです。

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2024年09月01日