第4の地獄が「叫喚(きょうかん)地獄」です。苦痛に迫られて絶叫するので、このように名付けられます。
ここまでの堕地獄の3つの罪因に加えて、酒に溺れる「飲酒(おんじゅ)」の罪を犯した人間が堕ちます。
ここに住む獄卒たちの頭は黄金色に光り、
眼からは火を放ち、
赤い衣服を身につけ、
手足が大きく、
風のように早く走り、
矢で罪人たちを射抜きます。
罪人が「どうか助けてください。見逃してください」と憐れみを求めると、
その言葉を聞いてますます怒り狂います。
罪人の頭を鉄の棒で叩き、焼けた地面の上を走らせ、熱したフライパンで何度もひっくり返して炙り焼き、熱い釜に放り込んでグツグツと煮込みます。
また、猛火に包まれた鉄の小屋に追い込む。
あるいは、金ばさみで口をこじ開けて、煮えたぎる銅を流し込みます。
獄卒たちは、ただ黙々と罪人を責めているわけではありません。罪人に対して詩を詠む鬼がいたるところに登場します。
地獄描写の出典である『正法念処経』を読むと、漢字5語で通韻した「五言絶句」の偈文(詩)が多く登場します。
『往生要集』ではかなり省略されていますが、叫喚地獄には罪人と獄卒の偈による対話が描かれています。
罪人が獄卒に言います。
汝何無悲心。復何不寂靜。我是悲心器。於我何無悲。
「あなたちには思いやりはないんですか? いつまでこんなことを続けるんですか? もうこんな仕打ちは耐えられません。 いいかげんにしてください!」
すると獄卒が答えます。
已爲愛羂誑。作惡不善業。今受惡業報。何故瞋恨我。
汝本作惡業。爲欲癡所誑。彼時何不悔。今悔何所及。
「欲望の網にからめとられ 悪事の限りを行った 自分の罪の報いであろう どうして俺を恨むんだ?
積もりに積もった悪業は 欲と愚かさの結末だ あの時どうして悔やまなかった? 今ごろ悔いてももう遅い!」
まるでヒップホップの「ラップバトル」「MCバトル」のようなやりとりです。
合掌