第3層が前述の「殺生」「偸盗」に加えて「邪淫(じゃいん|不倫をはじめとしたよこしまな性の交わり)」を犯したものが堕ちる「衆合(しゅごう)地獄」です。
衆合とは、「衆多の苦が倶に襲いかかる」を意味します。一説には「堆圧(重ねて押し潰す)」とも。
この地獄には幾つもの大きな鉄の山が向かい合っています。
武器を手に持った牛頭や馬頭という獄卒たちに罪人たちは追いかけ回され、山の間に追い込まれます。
▲衆合地獄(「六道絵」部分)所蔵 / 大英博物館
すると、向かい合った山が迫ってきて、罪人たちは身体を押しつぶされてしまいます。
また、「鉄で出できた山が空から降ってきて罪人を粉々に砕く」「罪人を石の上を乗せて岩で押し潰す」「鉄の臼に入れて鉄の杵でつく」といった責め苦に遭います。
終わったかと思うと極悪鬼や熱い鉄でできた獅子、虎、狼などの獣、さらにはカラスやワシなどの鳥が集まってきて死肉を食い散らかすそうです。
他にも燃える鉄のクチバシを持ったワシが罪人の腸を樹に引っかけて食べるといいます。
少し離れたところには大きな河があります。中には鉄でできた拷問器具が準備されていて、どれもこれも燃えています。獄卒たちは罪人をそこに投げ入れます。
罪人が漂よう河全体は、溶けた赤銅が流れています。
頭だけ浮かんでいる人、石のように沈んでいる人、両手を挙げて天に向かって号泣する人、身を寄せ合って泣き叫ぶ人がいます。
いずれにしても未来永劫かぎりなくこの苦しみを受けなければいけません。頼る人もいなければ、救う人もいないのです。
別の場所では、獄卒に罪人が拉致されます。連れていかれるのは、刀のように鋭く尖った葉っぱを持つ木が繁る林です。
木の上にはとても美しい女性がいます。
罪人たちは、その女性めがけて木に登り始めます。
すると、木の葉は刀のように罪人の肉を切り裂きます。全身がズタズタになりながらも、ようやく木の頂上に登り詰める……すると、さっきまで木の上にいたはずの女性が地上にいるではないですか。
「あなたに恋焦がれてここまで来たのに、どうして私から離れていくのですか?早く私の元へ来てください」
罪人は欲情し、木の上から地上をめざします。すると今度は、刀の葉が上向きに返り、木から下りる罪人の身体を再び切り刻みます。
やっとの思いで地上に戻ると、女性はまた木のてっぺんに……罪人は再び木を登り始め、身体を切りつけられます。
▲衆合地獄(「六道絵」部分)所蔵 / 大英博物館
この一連の流れを際限なく繰り返すのです。
自分の心にたぶらかされ、地獄の世界を巡り続け、身体を焼き尽くされる。
すべては自分の起こすよこしまな欲の心が原因です。
獄卒たちは罪人に告げます。
「他人の罪を着せられて 苦しみを受けるわけじゃない
すべては自分の撒いた種 自業自得だと思い知れ」
寿命は黒縄地獄の8倍です。
合掌