仏教音楽は梵唄とか声明という言葉で表わしていますが、慈覚大師によって伝えられた洗練された声明は、さらに長い歴史を通して磨き上げられ、天台声明(魚山声明)として完成し、現代では東洋音楽を代表するものとして世界的に高い評価を受けていることは周知の通りであります。
魚山声明は京都大原に脈々と伝承されてきましたが、実は浄土真宗本願寺派の声明も、その天台声明の伝統を受けて独自の発展を遂げたものでした。
もともと親鸞聖人も、法然聖人の弟子になられる直前には、比叡山の常行三昧堂の堂僧を勤めておられたといわれていますから、勝れた天台学者であったと同時に天台声明の本場で鍛え上げられた声明の専門家でもあったわけです。
「正信念仏偈」、「念仏正信偈」、『入出二門偈』のような漢讃(漢文で書かれた仏徳讃嘆の詩)や、『三帖和讃』を初めとする総数550首にものぼる膨大な和讃をご制作になっていますが、それらはみな、仏前で朗々と読誦する仏徳讃嘆の歌詠として作詞されたものでした。
合掌