地獄の受け止め方について、真宗大谷派の学僧・南條神興(なんじょうじんこう)師は『往生要集乙酉(いつゆう)記』に次のように述べています。
「そもそも六道輪廻の世界は、すべて個々人の業にもとづく感見の世界、つまり私たちそれぞれの心が見てゆく世界を説いたものである。
例えば『二千年堕ち続ける』という阿鼻地獄までの距離にしても、人の心がその罪業に応じて感受するものに他ならない。
(地獄なんて存在しないと言う)批判者はまず、我々の見ているこの世界だけを絶対のものとして疑わない態度こそ、反省すべきではないか」
仏教では、私たちのいるこの世界(六道)を、平板なひとつの世界とは捉えません。
それぞれの心が感受する世界の複層的な集合体と考えます。
私たちは自分の見ている世界しか知り得ませんが、だからと言ってそれ以外の世界を否定することは傲慢なことでしょう。
もちろん、私たちに地獄の「ある」「なし」を知る術も決める能力もありません。
地獄をはじめとした六道の世界は、混沌とした輪廻の世界を明らかに知り尽くした仏さまの教説です。
裏を返せば、六道や人間の前世などを具体的に語ることができるのは、仏さま以外にはいないということでしょう。
いずれにしても、地獄の世界は「仏さまが私に説いてくださった」と深く受け止めることを大切にしたいものです。
合掌