『往生要集』では、「焦熱地獄」の小地獄が前回や前々回の地獄と同じように2つだけ挙げられています。
●分荼離迦(ふんだりか)
とある罪人の身体が完全に炎に包まれています。
それを見た別の罪人が声をかけます。
「おーい! はやくこっちへ来い! はやくはやく! ここに蓮華の池があるぞー! 水は飲めるし、涼しい木陰もあるぞー!」
その言葉に誘われて走って行くと、途中に落とし穴が。
中では火が燃えさかっており、罪人はその穴に落ちて、身体をすっかり焼き尽くされます。
焼き尽くされた死んだ……と思えば、すぐ元通りに生き返り、またすぐに焼き尽くされて死んでは生き返る。
なんとか穴から這い出して池をめざし、やっとのことで池に辿り着きました。
その瞬間、池に咲いていた白蓮華(分荼離迦)が空を焦がすほどに燃え上がります。
その火に炙り焼かれて罪人は焼き尽くされると……また生き返ります。
生前に「自ら食を絶って餓死することで天上界に生まれることを望んだ外道」「そうした邪道を説いて人を陥れた者」が堕ちます。
●闇火風(あんかふう)
罪人たちは酷い風に煽られて空高く舞い上がり、つかまるところもなく、車輪のようにグルグルと身体が見えないほどに回転している。
回転が終わると、今度は別の強烈な風が吹き付けて、身体は砂のようにバラバラに砕かれ、飛び散っていきます。
飛び散り終わると生き返り、生き返っては飛び散る……これを永遠に繰り返します。
生前に「『あらゆる存在の中には、永遠不変の実体を持つものと、常に移り変わるものとがある。身体の様相は変化するが、〈地・水・火・風〉の四元素は不変の実体である』などど、外道の誤った見解を説いた人」が堕ちます。
合掌