焦熱地獄の次が「大焦熱(だいしょうねつ)地獄」です。殺生・偸盗・邪淫・飲酒・妄語・邪見に加えて「戒律を守って生活をしている尼僧を陵辱した人」が堕ちます。
叫喚地獄と大叫喚地獄といった性質・特徴の似たふたつの地獄の続いたあと、さらにまた同じような関係を持った焦熱地獄と大焦熱地獄が続きます。
広さや苦しみの内容は焦熱地獄で同じですが、苦しみの量は10倍です。
寿命は半中劫とあります。一中劫の半分です。劫という時間の単位については以前の記事をご参考ください。
ちなみに芥子劫における城の大きさが40里四方だと「一小劫」、80里四方だと「一中劫」、120里四方だと「一大劫」です。
大焦熱地獄に到着するまで、あらかじめ罪人はその有り様を見せつけられます。
恐ろしい顔で、手足が熱く、いきり立っている獄卒たち。
これを見て罪人が身を震わると、さらに雷のような声で怒鳴ります。
手に鋭い刀を持ち、突き出た腹はまるで真っ黒な雲のようです。目から炎をあげ、鋭い牙は光っています。
手が長く、身体を揺り動かして威嚇すると、身体中の筋肉が盛り上がります。
このようなさまざまな恐ろしい様相を見せつけることによって、罪人は喉が締まり、身体が固まり、その状態のまま地獄へと連れられていきます。
幾千万もの山海国土を越えて、見知らぬ海の果てまで連行され、さらに遙かな行程を経て、次第に地の底深くを潜っていきます。
世の中にはいろいろな風がありますが、罪人を地獄に引きずり込む風が最も激しく、この烈風によって罪人は地獄へと送り届けられます。
地獄に到着すると、まず閻魔大王が罪人を叱りつけます。
次に悪業の縄で縛り上げられ、連行。
遙か彼方に、果てしなく広がる大焦熱地獄の火の海を見て、先に責め苦に遭う罪人たちの泣き叫ぶ声を聞くと、悲しみと恐ろしさに心が締め付けられます。
何億兆年という無限の時間をかけて叫び声を聞かされ、恐怖はさらに増幅します。
それを見た獄卒が罪人に告げます。
「地獄の声を聞くだけで震えているかもしれないが、いよいよ炎で焼かれたらお前は枯れ葉のように燃え尽きる。
しかし、地獄の炎で燃えるのではない。これはお前の罪が起こした炎だ。
普通の炎なら消化できるが、己の罪の炎を消すことはできない」
十分に恐怖を与えたら、いよいよ大焦熱地獄の門が開きます。
高さは500由旬、幅は200由旬ほどもある山のような火が迫ってきます。燃えさかる炎は、悪人の悪業の力を表わしています。
獄卒は急に罪人を掴み、火の中を投げ入れます。その様子は、高い山のてっぺんから、断崖の谷底に突き落とすようです。
合掌