浄土真宗は 「在家(ざいけ)の仏教」 です。家に住み、家族と生活しながらさとりをめざす仏道です。
これに対して 「出家(しゅっけ)の仏教」 があります。家を出て、家族とのつながりを断ち切ってさとりをめざす仏道です。
「浄土真宗は在家で楽ですよね」と言われることがあります。
空調の効いた部屋の中で「なんまんだぶ」している私よりも、山の中でひとり修行をする人の方が厳しい環境に身を置いていますから、「在家は楽で、出家が厳しい」と考えるのは当然です。
しかし、「実際は逆ですよ」と先生に教えていただきました。
そもそも、仏教で出家をする理由は「在家が厳しいから」なんだそうです。
確かに家族との生活が順調なときはいいのですが、一歩間違えれば……親子、夫婦、兄弟がお互いに憎しみあう世界ほど厳しい環境はありません。
その点で出家は家族は捨てて自分のことだけ考えればいいので気楽です。
私たちの住むこちらの岸 (此岸|しがん)から、仏さまの世界であるあちらの岸 (彼岸|ひがん)へ迷いの海を渡るのが仏道です。
そう考えると、病気の親や小さな子どもを抱えて海を渡るのは至難の業です。
ところが、自分ひとりだったらどうでしょう。泳いで簡単に渡るとこができるはずです。
在家のしがらみを離れることは、自分の身を軽くすることを意味します。
浄土真宗は僧侶であっても在家であり、家や家族、財産を持って生きています。
しかしこれは、家族同士の憎しみ合いの争いがいつ起きてもおかしくない状況と背中合わせの仏道です。
仮に家族同士が恨みをもって衝突することがあったとしても、「そこに阿弥陀如来の慈悲が届いている」とよろこぶことができる世界を説くのが在家の仏教である浄土真宗です。
合掌