空調2

まだまだ残暑の厳しい日が続きます。


よりによって本堂の空調機が故障……。


ようやく修理することができました。


本堂の環境を涼しく快適に整えることは世間的に大事なことですが、仏教的にはどうでしょうか。


仏教は「八難(はちなん)」といって、「仏さまや仏法に遇うことが困難な8つの状況・環境」を説きます。
『長阿含経』には「八難解法」とあり、中国・隋の時代の浄影大師(じょうようだいし)慧遠(えおん)が著した『大乗義章(だいじょうぎしょう)』巻8にも解説がされています。


①地獄(じごく)②餓鬼(がき)③畜生(ちくしょう)のみっつの境涯は、あまりにも苦しすぎて仏法を聞く心のゆとりがありません。
現代でも度を超えてしんどいときには、仏法を聞く気にならないものです。


④長寿天(ちょうじゅてん)は、天上界の別称ともいわれます。この世界に生まれた人々は長生きなので仏法を聞かないそうです。
現代でも自分の死を意識しない人は仏法を聞きません。


⑤北倶盧洲(ほっくるしゅう)は、仏教の世界観である須弥山世界で北側にある地域です。『長阿含経』には涼しくて快適で自然豊かな素晴らしい場所であると説かれます。
あまりにも過ごしやすくて楽しみが多い環境では、さとりを求めるこころが起こりません。
現代でも人生を順調に楽しんでいる人は仏法を聞かないので、この教説に通ずるものは多いでしょう。


⑥仏前仏後(ぶつぜんぶつご)とは、仏さまのいらっしゃる前の時代と後の時代に生まれた人は、仏法を聞くことが難しいことを表しています。


⑦世智弁層(せちべんそう)は、世間に対する関心が強いことです。
現代でも世間の価値観に埋没していて自分を賢いと考えている人は仏法を聞くことがありません。


⑧感覚器官の障害を持つ人も、仏法を聞くことが難しいと述べられています。
あくまで仏法を聞くことが困難になってしまう状況についての教説ですが、注意が必要なところでしょう。


空調機を導入するということは、涼しくて快適な環境を作り出すことになるので④北倶盧洲に通じるかもしれません。
確かに適温が保たれた場所ではついつい居眠りをしてしまって仏法から遠ざかることもあるでしょう。
それでも私は暑いよりマシだと思いますが……ただ、西本願寺の本堂にも空調機はありませんね。


「八難」について、親鸞聖人は次のようにおっしゃっています。

金剛(こんごう)の真心(しんしん)を獲得(ぎゃくとく)すれば、横(おう)に五趣(ごしゅ)八難(はちなん)の道(どう)を超え、かならず現生(げんしょう)に十種の益(やく)を獲(う)
【現代語訳】金剛の信心を得たなら、他力によって速やかに五悪処(地獄・餓鬼・畜生・人・天)と八難処という迷いの世界をめぐり続ける世間の道を超え出て、この世において、必ず十種の利益(りやく)を得させていただくのである。

阿弥陀如来の大いなる智慧と慈悲の光明は、十方の世界をなく照らします。
生きとし生けるものを障りなく導き育てて、人々のあらゆる生涯を超えて救いをもたらします。


そのことが「尽十方無礙光如来(じんじっぽうむげこうにょらい)」のお名前に明らかになっています。
「尽十方無礙光如来」の御名(みな)に喚び覚まされた人は、「五趣」や「八難」に妨げられることなく、さとりをめざして「無礙(むげ)の一道」を歩むものと仕上げられます。

合掌

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2018年09月01日